70年前の税金督促状

「70年前の樋島村税督促状」

樋島村(現上天草市龍ヶ岳町樋島)村長の森國久名で、昭和27(1952)年に発行されたガリ版刷りの「納付願い文」(村税の督促状)が「発見」された。樋島のある住民の方が自宅に大切に保管されていたこの文書を見せてくださったのである。
 昭和26年森國久が樋島村長として就任した当時、それまで村は赤字財政で困窮し、予算も組めない状況であった。村長は税金徴収にあたり、まず納税推進業務について職員自身の意識改革をおこなった。と同時に、納税意識が定着していない村民から村税についての理解を得るために、ある工夫を考え出した。 
いての理解を得るために、ある工夫を考え出した。
 工夫が凝らされた督促状の全文をここに掲載する。

(原文)
昭和二七年十月二三日
各位 殿 樋島村村長  森 國久
村祭りも目の前にせまり何かと忙しい事と思います。
現在の村税滞納額別紙の通りになっております。
 本当に苦しい生活ではありますが、このままでは次から次と重まるばかりで後でますます苦しまねばならない事になります。
また十一月一日から二十六年度迄の滞納に対しては、百円につき一日につき四銭の利子をつける事になっております。
やりたくない事ですが村の立場から物件の差し押さえや競売もしなければならない事になります。
 こんな事の無い様に村税を完納し立派な郷土樋島を建設しようではありませんか。
二十九日には完納された方には多少ではありますが賞品も用意しクジ引きをする予定をしております。
なお、一度に納める事の出来ない人は「納税貯蓄組合」が結成されておりますので、未だ加入されてない人は加入して、
月掛けでもして完納に努力される様願い致します。


村長自ら起案したと推定される書きぶりである。村民の苦しい生活を察する言葉で書きおこされ、滞納者に対する村の措置についてしっかり周知しながら、税の完納が郷土樋島を共に建設するための資金になる、と納税の意義を語り、一括納入が難しい住民のために納税組合の利用を進めている。
 税金督促状なのに居丈高な一片の命令通知ではない。短いが要を得ている。何とも「ほんわか」して心温まる内容である。税金を払おうかなという気にもなる。
 そしてこの通知文の何よりの極めつけは、完納者にはクジ引きで賞品を提供する計画まで盛り込んでいる点である。森國久のアイデアである。
後日談だが、クジ引きに立ち会った当時の元役場職員さんから、たまたま話を聞く機会があった。それによると、当日は納税者が殺到し、父親の代わりにくじを引いたら1等賞が当たってしまった。上司と相談し辞退しようとしたら、村長が「当然の権利だ、貰いなさい」、と言って叱られたそうだ。その人の父親は、賞品として頂いた長靴にとても喜び、長年大切に使っていた」との事。
「目配り」「気配り」が行き届き、しかもアイデアマンで実行力溢れる森村長の姿を彷彿とさせる話である。( J・m )

                                                                                                                                                                           

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